突然ですが、ドラゴンクエストの序曲はご存じでしょうか?
ゲーマーならこのメロディーが流れるだけで、心が打ち震えて冒険に飛び出したくなりますよね。
普段ゲームなんて全くしない方も、このメロディーを耳にしたことはあるのではないでしょうか。
僕は学生の頃からこの曲を日本の国家にして欲しいと思っているぐらい大好きで、東京オリンピックの入場曲で流れた時は涙がちょちょぎれるほど感動しました。
さてこの不朽の名曲ですが、作曲者のすぎやまこういち氏が言うには
「5分で出来た」
ということらしいです。
素晴らしい才能ですよね。
凡人が一生かけても作れないような作品を、たったの5分で生み出してしまうなんて。
しかし、この発言には続きがあって、
「これまで生きてきた55年と5分で出来た。これまでの人生がなければあの序曲は出来なかった」
という趣旨のことを述べられたようです。
すぎやま氏は
東京大学→テレビディレクター→CM作曲家→フリー作曲家
という凄まじい経歴の持ち主で、ドラゴンクエスト以前にも多くの有名曲を作っておられます。
それら全ての経験があったから、ドラクエの曲自体は5分で出来たということです。
このことを踏まえると、ドラクエの曲と「5分で出来た」の発言だけを取り上げて、すぎやま氏の才能を評価したり、他の作曲家と能力を比較したりは軽率過ぎるとは思いませんか。
しかし、こういう軽率な判断や評価は多くの場面でしてしまいがちです。
英語学習でも
「初受験でTOEIC800点超えた」
「3カ月でTOEIC200点伸びた」
「一発で英検1級合格した」
などの成功例を見て、自分と比べて落ち込んでしまうこともあるかと思います。
しかし、少し冷静に考えてみましょう。
本当に「初受験」だとしても、それ以前のその方の英語学習の経歴はどうでしょうか。
幼少期はインターナショナルスクールに通い、優秀な英語の成績で難関大学に進学し、更に大学では留学を経験したような人がTOEICを受けたら、「初受験」でも800ぐらいは余裕で取れるはずです。
英語が苦手だった人、生活の中で使用する機会が全く無かった人がその
「初受験で800点」
だけを見て、自分の初受験のスコアと比較するのは意味がないと思いませんか。
「3カ月で200点アップ」
などについても同様です。
例えば難関大学に通うぐらい基礎学力が高く、勉強習慣が身についている子なら、3カ月も真面目に対策すれば600点から800点ぐらいまでアップさせることもさほど難しくありません。
しかし、中学時代から英語が苦手で、そもそも勉強の仕方も分からないという方が、3カ月で目に見える成果を出すことは極めて困難でしょう。
その「3カ月」も、時間の自由が多い学生やフリーターの「3カ月」なのか、自分の時間なんてほとんど取れない社会人や育児中の主婦の「3カ月」なのかで大いに内容が変わります。
更に言えば「何点から何点にアップしたか」も重要な要素です。
「300点から500点」と「750点から950点」では難易度が天と地ほど違います。
こういう背景を何も考慮せずに、
「3カ月で200点」
という結果とその直前の過程だけで、それの価値を評価したり、自分と比べて一喜一憂したりに何の意味があるでしょうか。
ある物事の結果というのは、その直前のプロセスだけではなく、その人が歩んできた人生全てが反映されるものです。
英語力が同等の二人の人間が、同じ時期から英語学習を始めたとしても、成長速度には必ず差が出ます。
それは、そこまでの人生で培ってきた基礎学力、学習習慣は勿論、生活リズムや物事の考え方、性格までもが反映されるからです。
これらのことから
「結果やその直前のプロセスだけを見て、他人と自分を比較することは意味がない」
と僕は考えるようにしています。
皆様も「他人と自分を安易に比較して落ち込む」など、意味のないことに無駄な時間やエネルギーを取られないように心掛けることをお勧めします。
とはいえ現代のこのSNS社会において、他人の情報を全く見ないようにするというのは不可能かもしれません。
しかしどうしても他人の成果が気になってしまう場合でも、その成果の前には50年とはいかないまでも、数十年の経験があるかも知れないという可能性だけは忘れないようにしましょう。
そもそも、他人がどれだけの期間でどれだけ成果を出しているかなどは、本来自分には何の関係もないことのはずですから。
他人と自分を比べるのではなく、過去の自分より今の自分の方が成長できているかだけを考えて、何事にも取り組んでいきたいものですね。
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