「TOEIC高得点でも全然英語を喋れない人がたくさんいる」
「スコアが低くても英語ペラペラの人もたくさんいる」
このような意見をSNS上ではよく見かけます。
TOEICの試験日やスコア公開日、あるいは著名人がTOEICについてメディアで言及した際には、特にこういうタイプのポストを目にすることが増えるように思います。
大体はここから「TOEICで得点を取ることは意味が無い論争」が始まります。
「TOEICの勉強は英会話に役立たない」
「900点以上はやるだけ無駄だからさっさと卒業しろ」等々…
(英語の資格批判の際にTOEICばかりが槍玉に上がって英検に批判が少ないのは、英検には面接があるからかなと思います)
まぁ十人十色で様々な意見が出るわけですが、そもそも皆の認識がずれてて話がかみ合ってない印象を受けます。
それがタイトルの件で、そもそも「英語力」と「英会話力」は全然違うってことなんです。
まず「英語力」という言葉が幅広すぎて何を指すのか明確でなく、人によって認識が違うことが問題なのですが…
とりあえずは「英語力」=四技能(読む・聞く・書く・話す)の全て、と広く解釈するのが妥当かなと考えます。
だから、TOEIC高スコアや英検を取得すること、洋書を多読すること、洋画を見たり洋楽を聞いたりすること、実際に英語を話してみること、全て英語力の向上と言っていいと差し支えないと思います。
対して「英会話力」という言葉ですが、これは「会話」という言葉が入っている以上、「英語を使った口頭でのコミュニケーション能力」を指していると考えていいはずです。
で、問題はこの「コミュニケーション能力」のところです。
いわゆる「コミュ力」ってやつですが、この「コミュ力」と「英語力」とは全く別の能力なんですよね。
母国語である日本語で考えてもらえれば分かりやすいと思います。
漢字検定や日本語検定を取得したり、難関大学の文学部で勉強したり、文学作品をたくさん読んだりしたら、コミュ力も同時に向上するでしょうか?
国語教師や日本語教師など、いわば日本語の専門家の人たちは皆会話が上手でしょうか?
反対に、漢字は知らない、故事成語や慣用句も分からない、読書感想文すら書ききれない、という国語嫌いの人はコミュニケーションが苦手ですか?
どちらも全然そんなことないですよね。
言語に関する知識が豊富でも、そもそも他人と話すのが苦手な人。
言語の知識なんて全然なくても、単語とジェスチャーでコミュニケーションをガンガンとっていける人。
いずれのタイプの人も世の中にはたくさんいます。
要は、その言語の運用能力と、他人とコミュニケーションを取る能力はほぼ関係が無いということです。
勿論、特定のアカデミックなテーマに関して議論を交わしたり、研究成果を論文やスピーチで発表したりするなら、高い言語能力が必要になってくるでしょう。
しかし、海外旅行先でちょっと現地の人と仲良くしたり、最低限の生活をしたりするのにそこまで高尚な言葉や難解な表現を使う必要はありません。
必要なのはとにかく話しかける勇気と、簡単な単語と身振り手振りでどうにか意思を伝えようとする気合です。
試験問題を解いているときのように
「ここの動詞にはsをつけるのか?」
「この文は完了形か過去形のどっちがいいのか?」
なんて悩む必要はありません。
「ヘイ ソーリー! プリーズ ヘルプ。 ステーション ウェア?
オー サンキューサンキュー! アイム ハッピー!」
こんな話し方でも、意図が伝わって会話が成立すれば大正解です。
文法的な正しさや流暢さを全く考えないなら、中学校で覚える英単語で簡単な英会話は十分できるはずです。
ではこの要領でコミュニケーションを取れる人の英語力が高いのか?と問われると、それはさすがノーと言わざるを得ないでしょう。
英語の試験では得点が取れないでしょうし、洋書を読むことや洋画を字幕無しで見ることも出来ません。
英語で書かれた標識や案内文も読めないし、英語で手紙を書くことも難しいでしょう。
喋れているからスピーキングの能力は高い、とも言えません。
英検一級の面接のように、「政治や経済など特定のテーマに関して二分程自由にスピーチしてください」と問われても、おそらくまともに話すことは出来ないはずです。
このタイプの人が上手なのは、簡潔な言葉で意図を伝えたり、相手の感情を読み取ったりする能力であって、英語という言語の運用能力ではないからです。
極端な話、こういうタイプの人たちは英語でなく別の言語の話者とでも、身振り手振りと覚えた数単語だけでその場でフレンドリーになることすら可能なはずです。
こういうことを考えれば、冒頭で挙げた
「TOEIC高得点でも全然英語を喋れない人がたくさんいる」
「スコアが低くても英語ペラペラの人もたくさんいる」
という情報の両方が事実として多数存在しても、何もおかしくありません。
実際はそこまで難しい単語を使っていなかったり、文法的におかしい文を話したりしていても、自信満々で外国人とコミュニケーションを取っている姿を見たら、普通の人からすれば十分英語ペラペラの人に見えるでしょうし。
だから、「TOEICのスコアと英会話能力が比例しないから」という単純な理由だけでTOEICを批判するのは、さすがに短絡的すぎるというのが僕の個人的な考えです。
TOEICでスコアを上げるために文法やリスニングを学習することは、確実に英語力の向上に繋がります。
そして基礎的な英語力が高いほど、英会話の学習もスムーズに進みます。
というか、身振り手ぶりとその場のテンションに頼らない一定レベル以上の英会話がしたければ、基礎的な英語力は必須です。
ただそれが「英語力が上がった瞬間に英会話能力も上がる」という直接的な関係では無いことを留意しておくべきです。
そこを正しく認識しないと「たくさん勉強したのに英語が話せないから座学は無意味だ」という誤解が生じてしまいますので。
ということでTOEIC学習者の皆様は、外野の「無駄だ、意味ない」などの雑音は一切気にせず、自身の目標を達成できるように勉強に励んでいきましょう。
余談ですが、「TOEICのスコアが上がったのに、むしろ英会話が前より出来なくなった気がする」といった方もおられます。
これついてもきちんと理由があると考えているので、またの機会にそれも記したいなと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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