「子どもの方が脳が柔軟だから英語の習得が早い」
「大人は頭が固いから中々英語が上手くならない」
こういう意見を見たり聞いたりすることはありませんか?
僕は脳の専門家ではありませんので、脳科学的な話は詳しく分かりません。
しかし、色んな年齢層を指導してきた経験から、子どもの方が英語の上達が早いというのはある程度事実だと思います。
今回はその理由に関して、僕なりの考察を説明させて頂きます。
本記事を読んでお子様の英語学習について考えたり、或いはご自身の勉強法の改善に役立てもらったりして頂ければ幸いです。
※全部読むのが面倒な人は、最後の項目だけ読んでもらえれば内容は十分理解してもらえると思います。
羞恥心が薄い
大人の英語力が伸びにくい理由の一つとして、失敗を避けたがる意識があると思います。
「間違えたら気まずい、恥ずかしい」
という思いがその根底にあって、その思いは年齢が上がるほど強くなる傾向にあるようです。
年齢が上がると職場では後輩が増えたり、プライベートでも子どもが出来たり、自分の背中を見て育つ人が出てくるようになります。
そういう人たちの前で失敗する姿を見られるのは中々恥ずかしいものです。
「いい歳なのに、先輩なのに、親なのに、ベテランなのに」
年齢がいくほど、そういう枕詞が「失敗した」の前についてきて、より失敗を避けなければいけないという意識が出てくるのだと思います。
そして、普段から極力失敗を避けるような行動を取る思考や癖がついていると、いざそれが英語学習の際になっても、失敗を避ける思考が無意識のうちに発動してしまいます。
その結果、例えば英会話のレッスンなら
「先生が何言ってるかよく分からなかったけど、とりあえず適当に相槌打っておこう」
「本当はもっと言いたい意見があったけど、伝わるか自信ないから無難な答えだけしておこう」
と消極的なレッスンの受け方になってしまいがちです。
一方、子どもにはそういう羞恥心がまだありません。
立ち上がろうとして転んでしまうのを恥ずかしがる乳幼児はいません。
言い間違い、聞き間違いを恥ずかしがる幼稚園児もいません。
小学生ぐらいになったら先生や親に注意されたり、周りの子にからかわれたりで、間違うのを恥ずかしがる気持ちも芽生えてきますが、大人に比べればまだ全然でしょう。
学習というのは「新しいことを覚える→間違える→正しいやり方を学ぶ→練習する→間違える→…」の繰り返しです。
一回の間違いも経験せずに新しいことを習得するのは不可能ですし、間違った数だけ成長出来ると言っても過言ではありません。
そういう視点から見ると、間違いを恐れずにガンガン新しいことを試していける子どもが、間違いを避けようとする大人に比べて圧倒的に成長が速くなるのはごく自然なことです。
実際、大人でも間違いを恐れずにどんどん挑戦していけるタイプの人は成長が速いです。
ですので、これは大人と子どもの脳のつくりや能力の差というより、意識や思考から来る学習態度の差だと思います。

先入観がない
「子どもは耳がいいから発音が上手になりやすい」
という意見もよく聞くことがあります。
僕は、これについては音感的な意味で耳が良いというより、音に対して先入観を持っていないことが要因だと考えています。
具体的な例を挙げて説明します。
例えば”money”という英語のネイティブ発音を聞いて、なんと聞こえたか答えて下さいと質問するとします。
英語をあまり学習していない大人は「マネー」と答える人が多いでしょう。
しかし、”money”の発音は無理やりカタカナで表記したら「マニ」が近く、「マネー」の「ネー」の部分はどう聞いても聞こえないはずなんですね。
“apple”なども同様で、「アップル」と答える人がほとんどでしょうが、これもカタカナにすれば「エァポー」ぐらいで、「プル」とはまず聞こえないはずです。
では何故そんな聞こえない音に変換して答えてしまうかというと、「お金=マネー」「リンゴ=アップル」というカタカナで、日本語としてその単語の知識が頭に入ってしまっているからです。
また、英語より先にローマ字を習うのも、先入観を持って英語を読んだり聞いたりしてしまう原因になっている可能性が高いです。
例えば”family”という単語なら、ローマ字で読んでいけば「ファミリー」になりますが、ネイティブの発音は「ファムリ」に近く、真ん中の” i “の音はほぼ発音されないか、「イ」ではなく曖昧な母音になります。
しかし、大半の日本人は「ファミリー」と、はっきりと” i “の音を含んで「ミ」と読んでしまいます。
これは、「mi=ミ」と英語を学ぶ前からローマ字で頭に入ってしまっているからでしょう。
英語ではアクセントが乗らない、弱い発音になる母音は曖昧化することが多いのですが、ローマ字読みには曖昧母音という考え方がありません。
だから、本来は「ア」でも「オ」でもない音で発音されている部分を、頭の中で勝手にどちらかに変換して聞いてしまうということが起こります。
その現象の要因として、ローマ字読みが大いに影響してしまっていることを、発音指導するときに頻繁に感じます。
先述の「アップル」も、スペルをそのままローマ字読みしたところから発生している音ですし、ローマ字読みがカタカナ英語の原因になってしまうのは、英語より先にローマ字を教える日本の教育全体の問題点と言ってもいいでしょう。
(もっと言えば、発音が上手ではない英語教師がカタカナ英語を平気で教えること、そしてそういう教師が多すぎることが、日本の英語教育の根本的な大問題なのですが…)
ローマ字や外来語を習い始める小学3~4年生以下の子どもには、そういう知識も先入観も無いため、聞こえた音を本当にそのまま復唱しようとします。
頭の中で余計なフィルターを通さないので、正しい発音が身に付きやすいです。
大人は耳が悪いというのではなく、聞こえた音を勝手にカタカナに置き換えて理解したり、聞こえた音よりスペルを見て得た目からの情報を優先させたりするので、結果的に発音が上達しにくいのだと考えられます。

日本語力と英語力の差が小さい
日本語で考えた文の内容が難しければ難しいほど、それを英語に訳するのも当然難しくなります。
例えば「日本の食料自給率が低いことを日本政府は改善すべきか」のような英作文の問題が出たとします。
大人になって色々な知識がついてくると、こういう社会問題に対して簡単に答えを出せなくなってきます。
・世界情勢次第で価格の高騰化に巻き込まれたり、そもそも貿易が困難になったりする恐れがある
・今年備蓄米を放出したので、自給率を上げないと今後の備えが尽きる
・医療福祉など優先的に税金を投じるべき他の分野がある
・国土面積や土壌・気候の問題から、輸入した方が経済的に効率がいい
などなど、賛成・反対のどちらの立場の意見も様々思いついてしまい、日本語ですら簡潔に答えることが難しくなります。
それを英語で説明するのは更に困難です。
しかし、まだほとんど知識のない子どもなら
・ご飯が無くなったら困るから、もっと日本で食べ物をいっぱい作った方がいい
ぐらいの意見しか思いつきません。
そしてこれだけシンプルな文なら、英語にすることも簡単です。
そもそも日本語で考えることが簡単だから、英語に変換することも簡単ということです。
ここまで難しいテーマでなく、もっと日常的なことでも同様です。
感情表現一つをとっても大人の方が圧倒的に語彙が豊富です。
子どもなら「ムカつく」の一言で済ませてしまう感情でも、大人なら「怒り、苛立ち、不快、不満」と色々な感情が思い浮かぶし、それを「癪に障る、頭にくる、虫唾が走る、拒否感をもよおす」など表現する手段もたくさん知ってるはずです。
しかし、表現をたくさん知っているが故に、「英語でなんて言うんだろう」と悩んでしまうことに繋がってしまいます。
受験でかなり英語の勉強をして、高い学歴を持っている人でも英語が話せないというのは、この現象に一因があると思います。
高校・大学である程度英語を勉強した人なら、シンプルな英語だけで簡単な事柄を説明するぐらいは本来出来るはずです。
ところが、そういう頭の良い人はまず頭に思いつく日本語が難しいせいで、英語に変換するのが難しくなってしまいます。
そこに先述した羞恥心も相まって、「思った通りのことを伝えられなさそうだし、もし間違ってたら恥ずかしいから黙っておこう」となってしまうワケです。
大人でも子どものように英語を身に付けるためには
ここまでに説明したことが要因となって、大人より子どもの方が語学学習の成果が出やすいという現象が起こってくると個人的に考えています。
では大人になってしまったら、子どものように英語を上達させていくのは無理なのかというと、決してそうではないです。
上記した、大人が持つ成長を妨げる要因を意識的に回避していけば、子どもと同じような速度で学んでいくことも可能なはずです。
具体的には
1:間違うことを恥ずかしがらない
2:ネイティブの発音を聞いて、聞こえた通りに発音する。
3:なるべく簡単な日本語で考えてから、それを英訳する練習をする。
の三点を意識することです。
それぞれ補足した上で、学習に臨むときに取るべき態度の説明をします。
1について、間違いは成長のチャンスです。
恥ずかしがる必要がないどころか、積極的に迎え入れていくべきことです。
何か新しいことに挑戦してミスをした人を、馬鹿にするような人は滅多にいません。
いたとしたら、その人自身が何の努力もしたことがないだけの人です。
そんな人の言うことを気にする意味は全くありません。
また、上手くできるかどうかに関わらず精一杯努力していれば、大半の人は応援してくれるはずです。
そもそも、自分の成長が楽しくなってくれば、周りの目なんて気にならなくなってきます。
他人にどう思われるかより、自分が成長できるかに目を向けましょう。
2について、日本語やスペルに引きずられた発音をしないで下さい。
スペルの中に” mi “という文字があって「ミ」と読みたくなっても、ネイティブの発音で「ム」っぽく聞こえたら、その聞こえた音のまま発音してください。
” ra “や” la “なども、とりあえず日本語の「ら」で代用するのは止めて、本当に聞こえた通りの音を出すつもりで発音練習してください。
常にそういう意識で英語を聞くようにする癖がつけば、今まで聞き取れなかった単語や英文も聞き取れるようになってくるはずです。
リスニングや発音の学習では目からの情報は信じずに、耳からの情報だけを信じるようにしていきましょう。
3について、難しい日本語を英語に直す練習ではなく、簡単な日本語を英語に直す練習からしてください。
「先月病院にお見舞いの品を持って来てくれた友人に、明日会ってお礼をするという段取りになっている。」を全部一気に英語にしなくていいです。
「先月入院してた。友人が会いに来た。ギフトをくれた。明日その友人に会う。お礼をするつもり。」と細かく分割してそれぞれ簡潔に伝わるような英語にする練習をすればいいです。
多少ニュアンスが変わっても、まずは自分が使える単語で意図が伝わるように話すのが大切です。
慣れたら少しずつそれらを繫いで、徐々に長い分を話す練習をしていきます。
その上で、更に細かいニュアンスを伝えるために、新しい単語や熟語も覚えていきます。
最初から一気に難しいことをやろうとして、何も出来なくなってしまうという事態だけは回避しましょう。
以上の点に注意して学習に取り組めば、年齢が原因で学習が鈍化してしまうことを防ぐことができるはずです。
他に子どもの成長が速い要因として、学習に充てられる時間が圧倒的に子どもの方が多いなど、頭の使い方や学習態度以外の要因も当然考えられるのですが…
そういうことを言い出すと、年齢に関わらず学習環境は千差万別で言い出すとキリが無くなるので、今回は多くの子どもと大人が持つ学習態度の共通点についてだけお話させて頂きました。
長くなりましたが、皆さまの学習の参考になれば幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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